セックス・ポジティブで幸せな関係を目指して

映画ジャーナリストの私がセックス・エデュケーターになった理由

こんにちは。

映画ジャーナリスト、セクシュアリティジャーナリストの此花わかです。

私はNYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部門で働いていましたが、2007年に夫の転勤で日本に帰国し出産・育児をきっかけに、ファッション、カルチャー、ジェンダーや映画をテーマに女子SPA!、日刊SPA!、BizSPA!、FRaU、VOGUE GIRL、Pen、シネマトゥデイ、リアルサウンド映画部、Wezzy、The Fashion Post、映画雑誌やパンフレットなど様々なメディアで執筆してきました。

ここ数年は主に映画人のインタビューや映画評をメインに書いてきましたが、2年ほど前から日本のセックスレスが社会問題化しているという現象に興味をもち、フランス、アメリカや日本で取材を始め、2021年の2月からFRaU Webで、#みんなセックスレス というルポタージュを連載しています。

この連載では国内外のセックスレスに悩む男女や、海外のセクソロジストのお話を伺っています。

セックスレスは日本社会に巣くう“生きづらさ”の表層

セックスレスは、育った環境、、住環境、日常のストレス、身体的機能、マンネリ……様々な要素が複雑に絡み合い起きる現象です。解決するには、カップルのお互いが歩み寄り、着地点を見つけることが必須。しかし、セックスをタブー視する価値観がバイアスとなり、パートナーとの対話を妨げていたり、自分のセクシュアリティ(性のあり方)を追求できなかったりするケースが非常に多いのです。

セックスレスは文化をこえて起こる現象ですが、興味深いことに、私が取材した限りでは、欧米ではセックスレスが日本ほど問題視されていない印象を受けました。セックスレスを10年続けたドイツ人妻にも取材しましたが、彼女と夫はセックスレスに悩むというよりは完全な仮面夫婦で外国暮らしであることから離婚できない状況にいました。また、セックスレスに悩んでいたアメリカ人妻は夫婦でセックスレスに取り組み、比較的短期間で解消に至りました。

ヨーロッパやアメリカでは夫婦カウンセリングが浸透していること、離婚しやすい社会的・心理的環境があること、セックスレスでも愛情をスキンシップや言葉で表現する習慣があること、性的コミュニケーションがリレーションシップ(関係)の一部だという意識があること、幼少期からの性教育が進んでいること……などが要因だと考えられます。

比べて日本は、セックスの話は基本的にタブー。セックスの話をすると怒り出すパートナーも少なくありません。とりわけ出産後は、愛し合う恋人同士ではなく、パパとママになってしまうカップルも多いですよね……。

同調圧力、男女を抑圧するジェンダー規範、狭い家、受験、残業文化、日本は非常に疲労とストレスが蓄積する社会だと思います。例えば、お弁当づくりのひとつをとっても、海外ではありえないほどの完成度を求められますし、男性は未だに一家の大黒柱としての役割を求められます。日常のあらゆる場面で「~すべし」が強いられる……。

そういったストレスの蓄積がセックスレスの形として浮かび上がっているのではないでしょうか。つまり、セックスレスは日本社会に巣くう様々な“生きづらさ”の表層だと言えます。

セックスレスを取材中、何度も「私はどうすればよいのですか?」と涙を流して相談されましたが、私にはかける言葉もなく、歯がゆい思いをしてきました。お話を聞かせてくださる方々の気持ちを少しでも楽にしたいーー。そんな思いから、アメリカの性科学者であるアヴァ・カデル博士が主宰するリレーションシップ・性教育コースを勉強をし、アメリカのセクソロジストのコミュニティ、アメリカン・カレッジ・オブ・セクソロジスト(ACS)の認定セックス・エデュケーターになりました。

「セクシュアリティは人権」と「セックス・ポジティブ」

セックスは食欲、睡眠欲に続く人間の3大欲求だとよく言われますが、アメリカのセクソロジスト、エミリー・ナゴスキ博士はこれに異を唱えます。食欲や睡眠欲と違い、セックスをしなくても人間は生存できるからです。つまり、性欲は“食欲や睡眠欲ほど単純な生理的欲求ではない”ということ。セックスは単なる"行為"ではないからこそ、性的に幸せでいつづけることは、誰にとっても難しく、ひとつの魔法のような解決法はありません。

セックスは他者とのリレーションシップ(関係)で成り立ちます

実際にイギリスの公立小学校では、「自分とは異なる他者との関係を育む」リレーションシップ教育が性教育に盛り込まれていますし、アメリカの学校でも、性教育とリレーションシップ教育を包括的に教えるところが多いです。

残念なことに、日本にはセクソロジーの学部を設ける大学もなく、性の専門家が少ない上に、学校が行う性教育は性行為にフォーカスし、セックスとリレーションシップを切り離しているのが現状です。

というわけで、この分野では日本よりずっと先を行く、セックスとリレーションシップを包括的に考える欧米のセクソロジーの視点から、「セックスやリレーションシップにおける“つらさ”を改善する」情報を皆さんと共有していきたいと思います。

「セクシュアリティは人権」「セックス・ポジティブ」。この2つの理念をもとに他者と幸せな関係を育んでいきたい、そう強く望んでいます。最初は月に2~4本のペースで記事を配信していきますので、よろしければニュースレターにご登録ください。

そして、もし、セクシュアリティやリレーションシップにまつわるお悩みのある方は、此花が配信するニュースレターにご返信していただければ、可能な限り、ニュースレターを通して一緒に解決法を考えたいと思います。

セックス・ポジティブで幸せな日々を一緒に目指しましょう!

どうぞよろしくお願いいたします。

此花わかの主な登壇・執筆実績

スウェーデン大使館主宰、第9回「スウェーデン・オープン・フィーカ」ペールエリック・ヘーグべリ スウェーデン大使、宋美玄医師、セクソロジストのマーリン・ドレヴスタム氏と対談

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