セックスをしてもセックスレスは解消しない……パートナーとの性的相性の悪さは「性的スタイル」の違いにあった

今日はボストンを拠点にアメリカ、EU、アフリカやオーストラリアで活躍するセックス・セラピストのキャシー・マックマーホン博士による「性的ケミストリー」に関する主張を紹介したいと思います。
此花わか 2022.09.03
誰でも

こんにちは。ジャーナリストでセックス・エデュケーターの此花わかです。

この夏、我が家は家族全員コロナに感染し、子どもの受験準備などでバタバタとしていました。ラッキーなことに我が家は誰も重症化しなかったのですが、皆さまとご家族が健康で素敵な夏休みを送られたことを願っています。夏休みが終わったいま頃はちょうど体調を崩しやすいので、どうぞ気をつけてくださいね。 

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恋愛の”化学反応”、"ビビビと来る”といった現象を英語ではケミストリーと呼びますよね。”一目惚れ”も恋愛のケミストリーのひとつ。自分では抗えないほど誰かに強烈に惹かれることや、非常に相性の良いことを”ケミストリー”や”バイブ”と表現することがあります。そして、パートナーシップが破綻するときは、「ケミストリーがなくなったから」とよく言われます。しかし、カップルの性的幸福に性的ケミストリーは必要なのでしょうか? 

今日は、ボストンを拠点にアメリカ、EU、アフリカやオーストラリアで活躍するセックス・セラピストのキャシー・マックマーホン博士の主張を紹介したいと思います。

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◼人間はどのように恋におち、パートナーを選ぶのか?

まずは人間がどのように恋に落ちるのかを説明しましょう。恋愛は脳内で起こります。まず「あの人、素敵だな」という感情にホルモンや化学物質がミックスして、突然「恋におちる」興奮状態を作り出すと言われています。ホルモンと化学物質のどのような組み合わせが恋愛感情を引き起こすのかは、個々に異なり予測できません。恋におちるホルモンや化学物質についてはTRULYで詳しく書いているのでよろしければ読んでみてください。

そして、人間がパートナーを選ぶ脳内プロセスを説明するのは進化人類学者のヘレン・フィッシャー博士。以下が「パートナー選びと生殖に働きかける3つの脳内システム」です。これら3つとも”感情”です。性欲は食欲や睡眠欲と並ぶ単純な"本能"ではなく、"脳が心にはたらきかけて起こる精神的・身体的反応=感情"だと捉えてください。

① 性欲、性的衝動

② 恋、ロマンス

③ 愛着(アタッチメント)……長期的なパートナーと結ぶ深い一体感

これら3つのどこからでも愛情関係は始まります。性欲から始まる愛もあれば、深い一体感から始まる愛もありますし、恋心やロマンチックな感情から始まる愛もあります。「性欲」は様々なパートナーを求めて生殖ができるように、「恋」はひとりの相手との生殖行為をするエネルギーに人間が集中できるように、「愛着」は生殖相手とチームになって子どもを育てるために進化したとフィッシャー博士は説きます。「性欲、恋、愛着」の3つのうち、どれを大切に感じるかは人によって違うそう。

恋におち、パートナーを選ぶプロセスを理解した上で、性的ケミストリーについて考えてみたいと思います。

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◼3つの性的スタイルとは?

多くの性科学者は、性的ケミストリーを「セックスすればすぐに分かる相性」「セックスの化学反応」と定義しています。けれども、キャシー・マックマーホン博士によると、”長期的なパートナーシップ”において性的ケミストリーとは単純な"化学反応”ではなく、パートナーとの性的スタイルがマッチしているかどうかだと説きます。3つの性的スタイルは以下のとおり。

①没頭型

没頭型は、静かな性的スタイル。暗い部屋、静かなやりとり、安定したリズム、多くを語らないことが好きで、自分らしい落ち着いた方法でセックスに没頭したいタイプ。

②連動型

連動型は、パートナーと積極的に連動したいスタイル。パートナーと同調して感情を表現しあいたいタイプです。連動型はキスしたときに「こんなふうに目を閉じてキスするのが好き!」と口に出す一方、没頭型は「静かに!キスした後はただ感じていたいだけ」と思います。

③ドラマチック型

ドラマチック型は、セックスをドラマチックで遊び心があり、クリエイティブなものだと感じています。セックスを面白くするスキルを求めて、様々なプレイを楽しみたいタイプ。ドラマチック型は没頭型と相性が合いません。没頭型とドラマチック型がセックスをすると、没頭型は「なぜ私のそのままを愛してくれないのだろう? どうしてこんなにセックスを演出する必要があるんだろう?」と違和感を覚える一方、ドラマチック型は「こんな静かなセックスは退屈だ」と感じてしまうのです。

激しい恋におちて結婚したとしても、性的スタイルがマッチしていないと幸せな性的関係を継続的に長期間築けません。日本の既婚者の半数以上がセックスレスだという事実は、この性的スタイルのミスマッチも一因のような気がします。

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◼セックスの頻度を高めても、セックスレスの解消にはならない

キャシー・マックマーホン博士は、性的スタイルがミスマッチしたカップルにとって大事なのは、セックスの頻度を高めることではないと言います。性的スタイルが違う者同士は、同じセックスの言語を話さないから頻度を高めたとしても満足できないそう……。

それでは、性的スタイルがミスマッチのカップルはどうすればよいのでしょう? 自分とパートナーの性的スタイルを知り、"違い"を尊重した上で、自分の"境界線"(されて嫌なこと、自分のNO)を侵さない範囲で着地点を見つけるしかないのです。

パートナーとの性的ミスマッチに悩む皆さんに私が伝えたいのは、パートナーと恋におち、感じた”愛情”を否定してほしくないこと。愛がなくなりセックスレスになる人もいますが、愛があっても、性的スタイルが違うと長期的な性的幸福をキープするのは難しいのです。それでもパートナーシップを続けるのであれば、お互いの感情を想像して歩み寄ることがパートナーに対する責任です。ただし、自分の境界線や性的同意を一番に考えた上で、性的ギャップを埋めることができない場合は……別れやオープン・リレーションシップを考慮するのもよいかもしれません。

最後に、世界には様々な性の研究や説がありますが、あくまで参考に留めておいてください。”性のあり方”は個々により違うので、自分らしい幸せをご自身で選んでほしいと思います。

長々とお読みくださりありがとうございました!

このメールに返信すると私に届くようになっているので、ご意見・ご質問などを気軽にしてくださいね。

此花わか

【参考】

Sexual Chemistry: The Mythical Land of Groin - Couples Therapy Inc.

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