「パートナーの性欲を高めたい」「自然なセックスをしたい」「パートナーに飽きた」どうすればよい?
こんにちは。ジャーナリスト/セックス・エデュケーターの此花わかです。
今回は、「パートナーと性欲のギャップがある場合にどうしたらよいか?」というテーマで、SNSを通して私に相談してくださった方からの悩みを許可を得た上でご紹介します。
カップルの性的ギャップ(性欲の不一致、性的価値観の違い)の根本的原因を探るのは非常に難しいと思います。なぜなら、これまで生きてきたすべての経験が私たちの"性のあり方"に影響しているから。価値観、ストレス、親との愛着関係、ジェンダー規範、病気、体調、更年期……私たちのセクシュアリティには様々な要因が絡み合っている上に、自分自身の"性のあり方"なんてあまり考えたことがないのが一般的ですよね。
パートナーとの間に性的ギャップが存在するとき、その根因を探るよりも自分とパートナーの性欲タイプを知り、どんな"背景”で自分やパートナーの性欲が高まるのかを認識することのほうが現実的で前向きな行動だと個人的に思います。
■「自発的欲求と反応的欲求」2種類の性欲
アメリカで活躍するセックス・セラピストのケーシー・ターナー氏やエミリー・ナゴスキ博士など様々な性科学者よると、私たちには2種類の性欲があるそう。まず、自分とパートナーがどのタイプに当てはまるのかを理解しましょう。
①自発的欲求……突然スイッチが入ってムラムラするタイプの欲求。性欲を引き起こすのは環境に限らず、様々な要素があります。
②反応的欲求……環境や状況に敏感なタイプの欲求で、その日の出来事や体の調子、環境や状況に応じてオン・オフすることが多い。
より自発的な欲求をもつ人とより反応的な欲求をもつ人がパートナーシップを結んだ場合、「性的ギャップ」が起こります。こういったことを踏まえて、欧米の心理カウンセラーや精神科医が行うセックスセラピーは、反応的欲求タイプの人が性的に興奮するような"背景"を作ることで、そのギャップを埋めるように手助けします。
"背景"とは、環境的・状況的なもの(例:セックスの時に電気をつけるか、子供が近くにいないか)、生物的なもの(例:生理、性交痛、疲労)、精神的なもの(例:相手への不満、ストレス)などがあります。どの背景で性欲が"オン"になり(アクセル)、どの背景で性欲が"オフ"になるか(ブレーキ)を理解すれば、欲求の低いパートナーが興奮するような"背景"作りを始めることができます。
■相談1:「セックスは自然な流れでしたいから、計画したくない」
「パートナーには私に対して自然な性欲を感じてほしい」「自然な流れでセックスしたいから誘いたくないけれど、もっとセックスをしたい」という相談。
以前のニュースレターでもお伝えしましたが、恋愛の"トキメキ"や”ドキドキ”を引き起こす様々なホルモンが減っていくのは交際半年ごろから(最長で4年から7年まで、という複数の研究があります)。
「自発的欲求」よりも「反応的欲求」に近いタイプの人は、パートナーと長くいるにつれ、パートナーに対して"自然に"性欲を感じることが少なくなっていきます。これは、愛情とは関係ありません。
しかし、多くの人が「自然な流れでセックスをしたい」と考えるのは"自発的なセックス"と"刺激的なセックス"を同一視していることにあると思います。(もちろん、映画のワンシーンのように、突発的にお互いの服を脱がし合うようなセックスが情熱的であることは間違いないですが、毎回そんなセックスをするのは非現実的でしょう)
セックスが計画的であっても、刺激的なセックスを生み出すことはできます。例えば、パートナーと話し合って行うロールプレイ("ごっこ"遊び)やコスプレ。これは計画的なものですが、刺激的ですよね?
また、プレジャートイを取り入れるのも計画的ですが、刺激的なセックスではないでしょうか? 計画的なセックスでも"目新しい"セックスを取り入れることはできますし、実際、性行為前に新しい方法を取り入れることについて話すことは楽しいし、刺激的でもあります。
何より、話すことで安全なセックスもできますし、親密さを深めることもできますよね。ですから、セックスを計画するのは自然じゃなくても、かなり刺激的ではないでしょうか?
同じ人とのセックスに飽きが来るのは多くの人にとってごく普通の現象なのだから、「自然なセックスのほうがよいセックスだ」という思い込みは捨てたほうがよいように思いますが、皆さんはいかが思われますか?
■相談2:「セックスを計画されると性欲が湧かない……」
とはいえ、実は、セックスを計画することがストレスになるパートナーもいます。自発的欲求よりも、反応的欲求寄りの人にとってセックス・アポは不安を高める場合も。セックス・アポの時間が近づいてくると心配になり、セックスを楽しめなくなる人もいるのです。
もし自分やパートナーにそんな傾向があればセックス・アポではなく、"親密さを深める"アポにするのはいかがでしょう? ”親密さ”とは人によって異なります。それは、今日一日がどうだったかをおしゃべりする時間かもしれないし、一緒にシャワーを浴びることかもしれません。一緒に本を読んだり、お気に入りのレストランに行ったりすることかもしれません。
親密さをスケジュールすることと、セックスをスケジュールすることは等しくないですが、プレッシャーの少ない"親密な時間"を作ると、結果的にセックスにつながる可能性があります。
以前、FRaU Webからインタビューしたスウェーデンの著名な性科学者であるマーリン・ドレヴスタム氏によると、「親密さ」には3種類があり、そのどれかが欠けていると性的ギャップは起こるそう。
詳しい話はぜひ以下の記事を読んでいただきたいのですが、私がセックスレスの取材で思うのは、性的ギャップを長期間こじらせているカップルは”親密さ”に問題があると感じました。そして親密さを深めるにはコミュニケーションが何よりも大切なのです。
ドレヴスタム氏のセラピストとしての経験上、3つの親密さのどれかを改善していくと、そのうちに性欲が芽生えるカップルも多いそうです。
■相談3:「いつも半年から1年でパートナーに飽きてしまい、浮気してしまう」
色々な性科学者の説がありますが、一般的に交際から6ヶ月の時点で恋愛の「熱中期」と呼べるステージから、より献身的な愛のステージへと移行し、その過程で、私たちの脳は実際に変化します。
「熱中期」はアドレナリン、セロトニン、ノルエピネフリン、コルチゾールが大量に分泌され、高揚感や覚醒感が高まります。しかし、交際が深まるにつれて、これらのホルモンは低下し、その興奮は下降の一途をたどります。
つまり、パートナーをあまり必要としない、あるいはまったく必要としなくなる"気持ち"になってしまう人もいるのです。多くの場合、これはパートナーに対し全く欲求がなくなることではありません。
パートナーに対して自発的な欲求をもっていたのが、以前よりも、性行為の"背景”に影響されるようになり、反応的欲求へと変化していくのです。端的に言うと、交際当初は簡単に性的興奮を感じていたけれども、いまは、自分を興奮させる”背景”が必要になってしまったということ。こういった変化もごく一般的。人間はホルモンに大きく作用されるのです!(人間は自分の行動をコントロールできるはずですから、浮気はホルモンのせいだからしょうがない、という乱暴な結論ではありません。)
パートナーに対して以前ほど性的欲求を感じない人は、「パートナーとのセックスに飽きてしまった=他の人を探そう」ではなく「パートナーに飽きてしまった=新しい人ではなく新しいセックスを探そう」という、もっと創造的で少し努力のいる考え方にシフトしましょう。
そうして想像力を駆使して新しいセックスを探求することにより、興奮ホルモンも分泌されて情熱や性欲も取り戻せます。
セックスは非常に奥深く多様。ロールプレイ(ごっこ遊び)、コスプレ、五感を使ったセンシュアルトークや性的妄想を語り合うエロティックトーク、タントラセックス(呼吸法にフォーカスしたセックス)、BDSM(ボンテージ、ディシプリン、SM)……など様々。
"挿入"以外のセックスもたくさんありますし、オーガズムも最低でも4種類あると言われています。
このような本もあるので、こういった技法をパートナーと楽しみながらトライするのはいかがでしょう?
「パートナーに飽きてしまったので浮気したい」と感じる人はぜひ、上記のような本から様々な技法やセックスのポジションを学んでみてください。
まだ色々とシェアできる悩みがあるのですが、今日はここまでにしておきますね。
最後に、このニュースレターに返信をくださった方がいたようですが、何らかの問題で私に届いていないようです。ただいま運営側と問題を確認中ですので、それまでにご意見やご感想などがあれば、twitter@sakuya_kono、instagram@wakakonohana、wakakonohana@gmail.comまでご連絡ください。
ニュースレターに返信してくださった方、本当にありがとうございました! また、SNSで相談してくださった方、この場でシェアすることを快諾していただき心より感謝いたします。
それでは皆さま、よい週末をお送りください。
長々とありがとうございました!
此花わか
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