セルフプレジャーはバイブレーターを突っ込むことでも、「ひとりエッチ」でも「マスターベーション」でもない
こんにちは。ジャーナリストでセックス・エデュケーターの此花わかです。
今日の記事は過激なタイトルになってしまい、すみません(笑)。「セックスのときにどうしたらよいか分からない」「いつもマグロ」「男性パートナーに性欲がわかない」などという悩みを多くの女性から相談されます。
■セックスのブレーキ(性的抑制システム)
私たちの誰もがもつ性的抑制システム「セックスのブレーキ」。アメリカのセクソロジスト、エミリー・ナゴスキ博士はセックスのアクセル(性的興奮システム)とブレーキ(性的抑制システム)がアンバランスだと、セックスレスになったり、オーガズムを感じられなかったりなど性的に不幸せになるという見解を示しています。
セックスのアクセルとは「自分が何に対して興奮をするのか」、ブレーキは「自分は何によりセックスをしたくなくなるか、何が自分を性的に抑制しているのか」ということ。セックスのアクセルは視覚、触覚、味覚、聴覚、嗅覚の五感やロマンスなど、6つのカテゴリーに大きく分けられますが、ブレーキはより複雑な要素が含まれています。
今回は、セックス・ブレーキのなかでも「ネガティブなボディイメージ」についてお話したいと思います。
■セックス・ネガティブな社会で育つボディイメージとは?
風俗店、AV、ポルノ紛いのアニメなど日本にはセックスが氾濫しています。違法行為でない限り悪いことではないのですが、その反動のせいか、人間のセクシュアリティ、とりわけ"女性の性"を抑圧する社会規範があります。
例えば、アラサー、アラフォー、アラフィフという女性を"年齢"でカテゴライズする。女性が肌見せをすると「エロい」と"性的対象化"する。成熟した女性がミニスカートを履くと「イタい」と蔑む。駅前のお店では女性の"性"が売られているのに、非セックス・ワーカーの女性には「貞節」「清純」でいることを求めます。
男性も違うカタチで社会に抑圧されているので、女性だけが社会の被害者だと言いたいわけではありません。ノンバイナリーやトランスなど性的マイノリティはもっと抑圧されいます。けれども、このように個人が自分のセクシュアリティ(性のありかた)を自由に表現できない社会はセックス・ネガティブだと言えます。
そうして、そんなセックス・ネガティブな社会で育つ人間は、自分のボディに対しネガティブなイメージを抱いてしまいます。これは男性にもあてはまりますが、女性に対するルッキズムやエイジズムのほうがひどいので、自分のカラダに自信をもてない女性のほうが男性よりも多いと思います。
■セルフプレジャーとはバイブを突っ込むことではない
さて、セックスのときに電気を消したがったり、パートナーの前で裸になれなかったりする人がいますよね。あれもボディイメージがネガティブな証拠。自分のボディに対するネガティブなイメージは、セックスのブレーキとして働きます。自分が"どんなふうに見えているか"自信がない。もしくは、カラダを"エロい"もの、客体だと思っているから、セックスが"恥"となり自分を自由に主体的に解放できないのです。
そもそも自分のカラダが好きでないと、自分のカラダの"どこにふれられて、どんなふうに触れば気持ちよい"のか探求できません。自分のカラダを知らないのにパートナーのカラダを、そして、セックスを慈しめるでしょうか?
女性の読者にお聞きしたいのですが、いままでじっくりと自分のプライベートゾーンを見たことはありますか? 実は、私もセクソロジーを勉強するまで自分のゾーンを凝視したことがありませんでした。しかし、性教育ではまず自分のカラダを知ることから始まります。そこで毎日、鏡に映して自分のカラダを知り、もっと"カラダの感覚"や"官能性"を追求するようしたのです。すると、肌の感覚が研ぎ澄まされてとてもセンシュアルな気持ちになることを知りました!
セルフプレジャーは「ひとりエッチ」でも、「マスターベーション」でも、バイブレーターを突っ込んでオーガズムに達することでもありません。そうではなく、自分のカラダを知り慈しむことで五感をさらに高めて官能性を育むことなのです。
■セルフプレジャーとは"性の境界線"を広げること
① 鏡の前に全身裸で立ち、つま先から頭の先まで優しく撫でたり、こすったり、様々な強さで触っていきましょう。
② 自分のカラダで素敵なところを見つけて、認識してください。あなたのボディのどこがセクシーでしょうか?
③ 手だけではなく、いろいろなモノを使って肌が感じるセンセーションを楽しみましょう。ふわふわとした羽やフリンジの鞭など、SMプレイに興味がなくとも、肌にどんなふうに触れるかトライしてみて新しい感覚を味わいましょう。
④ 五感を高めるためにセルフプレジャーの間は、好きな音楽を聴いたり、アロマキャンドルを灯したり、味や匂いのするデリケートゾーン用のジェルをつけたりするのもオススメ。こういった方法はパートナーとのセックスにも使えますよね。
こんなふうにセルフプレジャーを通して自分の好みを知り、それを率直にパートナーに伝えることで、2人で"性の境界線”(限界)を広げていくことができます。セルフプレジャーに慣れたら、次はパートナーのカラダを同じように知り、慈しむこと。
セルフプレジャーと同様に、セックスは「キス→オーラルセックス→インターコース→オーガズム」といような単純なプロセスではなく、お互いの"感覚"を楽しむことなのではないでしょうか? 「勃起→挿入→射精」がセックスだという考えを捨てて、もっと自由で自発的で、駆け引きがあったり誘惑があったり、ジラしたりする遊びだとポップに考えてほしいです。
最後にお伝えしたいのは、ネガティブなボディイメージは女性だけでなく、誰もがもっているということ。だからこそ、お互いのカラダを頻繁に褒めあい、カラダに対する自己肯定感を高めていきましょう。
長々と読んで下さり、ありがとうございました!
よい一週間をお送りください。
此花わか
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